なぜ私の膝は前側が痛いの?その原因と対処法を徹底解説いたします!①「膝蓋靭帯炎」編
「膝の前側が痛いんですが、私の場合、ちょっと変な場所が痛いんです」
こんな方いらっしゃいますよね?
そこであなたは以下のように考えているのではないでしょうか?
- 何でこんな場所が痛くなるのだろう?
- 病院で「軟骨がすり減っていて、骨と骨の間が狭くなっているのが痛みの原因です」と言われたけれど、本当にそれが自分の膝の痛みの原因なのだろうか?
- 軟骨というよりは、筋肉のあたりが痛いような感じがする
- シップ・痛み止め薬・電気・マッサージ・リハビリだけで本当に治るのだろうか?
当院に膝痛でご来院される患者様の訴えで、一番多いのが「膝の内側の痛み」ですが、次に多いのは「膝の前側や、裏側の痛み」です。
でも痛みを発する場所は十人十色で、「膝の前側」と言っても、「膝のお皿の上」だったり、「膝のお皿の裏」だったり、「膝のお皿の下」だったり、もっと下の方の「すねの骨の出っ張り」だったり、人それぞれです。
なので、それぞれが近い場所にあっても、痛い場所自体が違うので、痛みの原因もそれぞれ違ってきます(膝関節の構造は複雑ですからね)。
しかし、それぞれの原因を一つの記事にまとめると、スゴく長くなってしまうので、今回は「膝の前側の痛み」の中でも、「膝のお皿の下~すねの骨の出っ張り」が痛くなる原因と、その対処法についてお話ししたいと思います。
この記事をお読み頂くと、あなたが悩んでいらっしゃる、ちょっと変な場所が痛む「膝の前側の痛み」のことが良くわかり、きっと今後の治療のお役に立つことでしょう。
「膝のお皿の下~すねの骨の出っ張り」には何があるの?
私たちの膝関節は、骨・筋肉・靭帯・滑膜などで作られていますが、今回のテーマの「膝のお皿の下~すねの骨の出っ張り」には何があるのでしょう?
そこには「膝蓋靭帯(しつがいじんたい)」と呼ばれる、膝関節の曲げ伸ばし運動と安定に、重要な働きをする「靭帯」があります。
「膝蓋靭帯」の特徴
私たちの太ももの前側には、「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」という大きな筋肉があります。
「大腿四頭筋」は、「下前腸骨棘(かぜんちょうこつきょく)」という骨盤の上の方にある骨の出っ張りや、「大腿骨(だいたいこつ・太ももの骨)」の上の方から始まる、長い筋肉です。
この「大腿四頭筋」は面白い構造をしていて、膝のお皿の上の辺りから「大腿四頭筋腱(だいたいしとうきんけん)」という「腱(けん)」に自分の姿を変え、「膝蓋骨(しつがいこつ・膝のお皿)」を包み込みながら、「脛骨粗面(けいこつそめん)」という、すねの骨の上の方にある出っ張りで終わります。
なぜ「大腿四頭筋」は、途中から自分の姿を「腱」に変えるのかというと、本来筋肉は柔らかく、伸び縮みしやすいというメリットがありますが、筋肉のすべての部分が柔らかいと、「大腿四頭筋」のように人体の中で最大のパワーを生み出す大きな筋肉の場合、力が強すぎて、最終的に自分と骨がくっつく部分で、自分が骨から剥がれてしまうというデメリットもあります。
なので「大腿四頭筋」は、最終的に自分と骨がくっつく部分で、硬い「腱」に姿を変えることで、自分が骨から剥がれないようにしています。
またこの「大腿四頭筋腱」は、更に自分の強度を上げるために、特に強い力が掛かりやすい「膝のお皿~すねの骨の出っ張り」部分を、「膝蓋靭帯(しつがいじんたい)」という硬い靭帯を加えて、補強しています(「腱」は硬い繊維ですが、「靭帯」はそれよりも更に強くて硬い繊維です)。
「膝蓋靭帯炎」の原因とは?
「膝蓋靭帯炎」には2つのタイプがある
様々な筋肉・骨などで作られている膝関節の構造は複雑で、「膝蓋靭帯炎」は「痛くなる場所」と「痛くなる年代」によって、「ジャンパー膝」と「オスグッド病」という2つのタイプに分けられます。
①「ジャンパー膝」は、膝のお皿の下が痛い
「ジャンパー膝」はその名の通り、スポーツなどのジャンプ動作の繰り返しで、「膝蓋靭帯」の中でも、特に「膝のお皿の下」部分が強く引っ張られてしまい、靭帯の一部が傷ついて炎症を起こし、痛くなります(稀に膝のお皿の上が痛くなる場合もあります)。
「靭帯って、強いものじゃないの?」
靭帯は、正常な範囲で使う分には、充分に膝関節を守ってくれる強度があります。
しかしどんなに強靭なワイヤーでも、すごく重たい物を長期間に渡り、何度も繰り返し引き上げることで、そのワイヤー繊維の一部がケバ立って、数本切れてしまい、強度が弱くなることがあります。
同じように靭帯も、負担が掛かり過ぎてしまえば、傷ついてしまいます。
では「膝蓋靭帯」が傷ついてしまう原因は、何でしょうか?
答えは、「大腿四頭筋」の硬さです。
「大腿四頭筋」が硬くなると、その硬さが「膝蓋靭帯」を強く引っ張ってしまい、特に「膝のお皿の下」部分に強い負担が掛かり過ぎてしまい、痛くなってしまいます。
また他の例を挙げると、「私はスポーツをした訳じゃないのに、膝のお皿の下が痛いんです」という方も大勢いらっしゃいます。
なぜスポーツもしていないのに、「大腿四頭筋」が硬くなってしまうのかというと、O脚などの構造上の問題が原因となっているからです。
O脚になってしまう方の多くは、程度に差はありますが、「膝が曲がっている」という構造上の問題があります。
膝が真っすぐ伸びている方が、正常な使い方をしているのであれば、「大腿四頭筋」が硬くなり過ぎることはありません。
しかし少しでも膝が曲がってくると、姿勢のバランスを取るために、太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)が、常に力張んでいる状態になり、「大腿四頭筋」は異常に硬くなってしまいます。
するとスポーツなどでジャンプ動作を繰り返した場合と同じように、「膝蓋靭帯」に強い負担が掛かり、その結果「膝のお皿の下」が痛くなってしまいます。
しかしこの場合は、特にジャンプ動作の繰り返しで痛くなった訳ではないので、「ジャンパー膝」とは呼ばず、単に「膝蓋靭帯炎」と呼ばれます(名前に違いはありますが、同じ症状です)。
②「オスグッド病」は、すねの骨の出っ張りが痛い
上でお話しした「ジャンパー膝」は、基本的に15歳以上の方に起こる「膝のお皿の下」の痛みです(15歳以下の方でも起きる場合もあります)。
しかしこれからお話しする「オスグッド病」は、「膝のお皿の下」が痛くなるのではなく、もっと下の「脛骨粗面(すねの骨の出っ張り)」が痛くなる症状で、基本的に15歳以下の若年者に起こります。
広い意味でいうと、「ジャンパー膝」も「オスグッド病」も、「膝蓋靭帯」の中の痛みなので、両方とも「膝蓋靭帯炎」と呼んでも構いません。
しかし実際は、好発年齢(症状が多発する年齢)と、痛みの出る場所が違うので、症状名(病名)を分けて診断されます。
なぜ痛みが出る場所が違うのかというと、原因は「年齢」にあります。
「膝蓋靭帯」がくっつく「脛骨粗面(すねの骨の出っ張り)」は、成長途中にある15歳以下の若年者だと年齢的にまだ柔らかく、「膝蓋靭帯」の引っ張る力に耐えられる骨の硬さが未発達なため、何度も繰り返し引っ張られることで盛り上がってきてしまいます。
ひどい場合は、この部分が剝がれてしまうこともあります。
これが「オスグッド病」です。
これに対し15歳以上の方は、「膝蓋靭帯」がくっつく「脛骨粗面(すねの骨の出っ張り)」が、年齢が上がるのに比例して発達し、硬い大人の骨になってくるので、強い力で引っ張られても盛り上がったり、剥がれてしまうことがなくなります。
すると大人の場合は、「膝蓋靭帯」の中で一番弱い「脛骨粗面(すねの骨の出っ張り)」部分ではなく、次に弱い「膝のお皿の下」部分に「大腿四頭筋」の引っ張る力が強く掛かってしまい、組織の一部が傷ついて炎症を起こし、痛くなってしまいます。
これが「ジャンパー膝」です。
痛みの出る場面
ジャンプ・着地動作をする時、ボールを蹴り上げる時、膝を曲げ伸ばしをする時、階段を上り下りする時などに、痛みが出るのが特徴です。
「膝蓋靭帯炎」の対処法とは?
急性期は「膝蓋靭帯」を冷やす
「膝のお皿の下」や「すねの骨の出っ張り」部分を触って、熱感(急性期=ケガの状態)があったら「アイスバッグ(氷のう)」などで、まずは冷やしながら安静にします。
「大腿直筋」を緩める・伸ばす
熱感が収まったら、次は「大腿直筋(だいたいちょっきん)」を緩める・伸ばすという対処法をします。
「大腿四頭筋」は、「大腿直筋」「内側広筋(ないそくこうきん)」「中間広筋(ちゅうかんこうきん)」「外側広筋(がいそくこうきん)」という4つの大きな筋肉で作られていてます。
「大腿四頭筋」が硬くなると、「膝蓋靭帯」が無理な力で引っ張られ、痛くなってしまうと上でも書きましたが、その「大腿四頭筋」の中で、痛みを引き起こす一番の原因になっているのは、「大腿直筋」の硬さです。
なので「大腿直筋」を緩めたり、伸ばしたりして硬さを取り除くことで、「膝蓋靭帯炎」は改善します。
やり方は、以下のセルフマッサージ(横方向・縦方向)と、ストレッチが効果的です。
■ セルフマッサージ(大腿直筋を横方向へ緩める)①軽く膝を曲げ、太ももの前側に力を入れると、ピーンと一番張った筋肉(大腿直筋)に触れられるので確認し、両手の4本の指を真っすぐ伸ばし、「大腿直筋」の両側に4本の指を押し当てる
②股関節に近い部分から膝関節に向かって場所を変えながら、「大腿直筋」の両側に4本の指を押し当てて緩めて行く(ゆっくり10回ほどやる)③骨盤の骨の出っ張り(上前腸骨棘・じょうぜんちょうこつきょく)から指2本分くらい下(下前腸骨棘・かぜんちょうこつきょく)に、「大腿直筋」の始まりがあるので、先ほどと同じように太ももの前側に力を入れると、ピーンと一番張った筋肉(大腿直筋)に触れられるので確認し、外側から4本の指を押し当てる
④太ももの付け根から15センチほど下まで場所を変えながら、「大腿直筋」の外側に4本の指を押し当てて緩めて行く(ゆっくり10回ほどやる)
■ セルフマッサージ(大腿直筋を縦方向へ緩める)①上のマッサージが終わったら、両手の母指球(手のひらの親指の付け根の膨らみ部分)を大腿直筋に押し当てる
②股関節に近い部分から膝関節に向かって場所を変えながら、大腿直筋を両手で包み込むように、母指球を押し当てて緩めて行く(ゆっくり10回ほどやる)
■ ストレッチ①立った状態で壁や椅子につかまり、伸ばしたい方の足首を手でつかみ、大腿四頭筋を伸ばして行く(30秒ほどやる)(この時、つかんだ方の膝が外側に向きやすいので、膝を真っすぐの方向にして、伸ばして行くのがコツです)
根本的に改善したい場合は?
スポーツなどのやり過ぎなどにより「膝蓋靭帯」が痛くなった場合は、スポーツなどを控えて、痛みが改善するまで上に書いた「対処療法」を継続して行えば良いと思います。
しかしO脚などの「構造的な膝蓋靭帯への負担」が、痛みを発生させている原因であれば、上の「対処療法」で痛みが軽減したとしても、同じような生活習慣を繰り返せば、また「膝蓋靭帯」が痛くなる可能性があります。
なので根本的に痛みを改善したいのであれば、上の「対処療法」と一緒に、「根本療法」をするのがおススメです。
「膝蓋靭帯」を痛くさせないためには、根本の原因を消滅させましょう。
ではO脚などの構造的な問題を解決するのは、どうしたら良いでしょうか?
答えは「姿勢」にあります。
生まれ持った特徴(先天的)としてO脚だったりすることはありますが、私たちの膝が痛みを発するようにまで、O脚が進行してしまったのは、生活習慣(後天的)であることは間違いありません。
「生活習慣の悪さ」が、「姿勢の悪さ」を引き起こしています。
なので、根本的に膝の痛みを発生させないためには、「姿勢改善」が必要不可欠となります。
この「姿勢改善」については、また別の記事でご紹介したいと思いますので、ぜひそちらの記事もあわせてご覧下さい。
まとめ
いかがだったでしょうか?
膝の前側の痛みの原因の一つ、「膝蓋靭帯炎」の原因と対処法がおわかりになったでしょうか?
勝負に勝つ(痛みの改善)には、まず「敵の情報と攻略法」を知ることです。
これなくしては、勝負に勝つことはできません。
ぜひこの記事を良くお読み頂いて、今後の治療にお役立て下さい。
またこの記事に書ききれなかった、他の原因による「膝の前側の痛み」も、別の記事でご紹介したいと思いますので、ぜひそちらの記事もあわせてご覧下さい。