なぜ私の膝は前側が痛いの?その原因と対処法を徹底解説いたします!③「膝蓋大腿関節症」編
「膝の前側が痛いんですが、私の場合、ちょっと変な場所が痛いんです」
こんな方いらっしゃいますよね?
そこであなたは以下のように考えているのではないでしょうか?
- 何でこんな場所が痛くなるのだろう?
- 病院で「軟骨がすり減っていて、骨と骨の間が狭くなっているのが痛みの原因です」と言われたけれど、本当にそれだけが自分の膝の痛みの原因なのだろうか?
- 軟骨というよりは、お皿の裏のあたりが痛いような感じがする
- シップ・痛み止め薬・電気・マッサージ・リハビリだけで本当に治るのだろうか?
当院に膝痛でご来院される患者様の訴えで、一番多いのが「膝の内側の痛み」ですが、次に多いのは「膝の前側や、裏側の痛み」です。
でも痛みを発する場所は十人十色で、「膝の前側」と言っても、「膝のお皿の上」だったり、「膝のお皿の裏」だったり、「膝のお皿の下」だったり、もっと下の方の「すねの骨の出っ張り」だったり、人それぞれです。
なので、それぞれが近い場所にあっても、痛い場所自体が違うので、痛みの原因もそれぞれ違ってきます(膝関節の構造は複雑ですからね)。
しかし、それぞれの原因を一つの記事にまとめると、スゴく長くなってしまうので、今回は「膝の前側の痛み」の中でも、「膝のお皿の裏」が痛くなる原因と、その対処法についてお話ししたいと思います。
この記事をお読み頂くと、あなたが悩んでいらっしゃる、ちょっと変な場所が痛む「膝の前側の痛み」のことが良くわかり、きっと今後の治療のお役に立つことでしょう。
「膝のお皿の裏」には何があるの?
私たちの膝関節は、骨・筋肉・靭帯・滑膜などで作られていますが、今回のテーマの「膝のお皿の裏」には何があるのでしょう?
「膝のお皿の裏」には、「膝蓋大腿関節(しつがいだいたいかんせつ)」という、膝の曲げ伸ばしに重要な働きをする関節があります。
「膝蓋大腿関節」の特徴
私たちの膝関節は、1つで作られているのではなく、2つの関節で作られています。
1つ目は、「大腿骨(だいたいこつ・太ももの骨)」と「脛骨(けいこつ・すねの骨)」で作られている「大腿脛骨関節(だいたいけいこつかんせつ)」です。
2つ目は、「膝蓋骨(しつがいこつ・膝のお皿)」と「大腿骨」で作られている「膝蓋大腿関節」です。
今回のテーマの「膝のお皿の裏の痛み」に関係しているのは、後者の「膝蓋大腿関節」の方です。
そして「膝蓋大腿関節」の中には、「関節包(かんせつほう)」という、袋状の膜もあります。
「膝のお皿」の特徴
■ 膝を伸ばすと「空間」ができる
「膝のお皿」が上下に移動し、「太ももの骨」と接触しながら動くことで、膝は曲げ伸ばしができます。
特に歩いている時や、座っている時は、常にお互いが接触しています。
ただ面白いことに、「膝をピーンと伸ばし切っている」時にだけ、「膝のお皿」と「太ももの骨」は離れることができます。
具体的にいうと、膝をピーンと伸ばし切って、立っている時です。
その時にだけ、「膝のお皿」と「太ももの骨」の間には、「ゆとりのある空間」ができ、接触していない時間ができます。
■ 膝を曲げると「空間」がなくなる
また「膝のお皿」には、他にも面白い構造があり、膝を曲げ始めると、とたんに「太ももの骨」と接触し始め、「膝のお皿」と「太ももの骨」の間にあった「ゆとりのある空間」がなくなってしまいます。
■ 膝を深く曲げると動かない
「膝のお皿」は、膝をピーンと伸ばし切っている時は、「太ももの骨」と接触していないので、指でつまみ上げたり、動かすことが簡単にできますが、膝を曲げると「太ももの骨」と接触するので、指でつまみ上げたり、動かすことが難しくなってきます。
更に、お尻とかかとがくっつくまで膝を深く曲げると、「膝のお皿」は「太ももの骨」と「すねの骨」の間に深く入り込んでしまい、「膝のお皿」を触ることはできるのですが、動かすことは全くできなくなります。
「関節包」の特徴
膝関節を衝撃や摩擦から守っている組織は、関節軟骨・半月板・滑液包などがありますが、「膝のお皿」と「太ももの骨」の間にある「膝蓋大腿関節」を守っているのは、「関節包」という袋状の膜です。
その「関節包」は、「膝蓋大腿関節」を含む膝関節全体を、前後・左右にグルっと覆っていて、その内部は「関節液」という潤滑剤で満たされていていて、膝の曲げ伸ばしの時に発生する、「圧迫力」と「摩擦力」を減らす働きをしています。
「膝蓋大腿関節症」の原因とは?
膝が曲がり「太ももの前側の筋肉」が硬くなる
「膝のお皿」は、「大腿四頭筋腱(だいたいしとうきんけん)」という、「太ももの前側の筋肉」の下の方にある部分が、硬い「腱(けん)」に変わった部分に覆われています。
なので「膝のお皿」の動きは、この「太ももの前側の筋肉」の硬さに、大きく左右される運命にあります。
「太ももの前側の筋肉」が硬くなる原因は様々ありますが、特に多いのは、下の2つのケースです。
- 仕事やスポーツなどによる、明らかに「太ももの前側の筋肉」を使い過ぎてしまったケース
- O脚により、膝が曲がってしまったケース(40歳以上の方に多く見られます)
前者の「使い過ぎによる硬さ」は、スポーツなどが原因なので、限られた方に当てはまるケースです。
しかし、実際の臨床現場で見られる患者様の多くは、後者の「O脚により膝が曲がってしまった」というケースに当てはまり、それが原因で「太ももの前側の筋肉」が硬くなってしまっています。
なのでこの記事は、O脚により膝が曲がってしまい、「太ももの前側の筋肉」が硬くなってしまった、というケースで話しを進めて行きたいと思います。
ではなぜ、O脚により膝が曲がってしまい、「太ももの前側の筋肉」が硬くなってしまうと、「膝のお皿の裏」に痛みが発生するのでしょうか?
その痛みの発生順序は、以下のようになっています。
①40歳以上に多いタイプのO脚(骨盤後傾・大腿骨外旋タイプ)の方は、構造的に膝が曲がってしまう
↓
②膝が曲がってしまうと、体の重心が前方に移動するので、体の前後のバランスをとるために、「太ももの前側の筋肉」が硬くなってしまう
↓
③「太ももの前側の筋肉」が硬くなってしまうと、その硬さにより「膝のお皿」は上に引っ張られてしまい、下に下がりにくくなる
↓
④「膝のお皿」が下に下がりにくくなると、「膝のお皿」の動きは上の方に偏ってしまう
↓
⑤「膝のお皿」の動きが上の方に偏ってしまうと、「膝のお皿」と「太ももの骨」が、「制限された一定の場所」に集中して接触するようになってしまう
↓
⑥「制限された一定の場所」に集中して接触するようになってしまうと、「膝のお皿」と「太ももの骨」には、同じような場所に「圧迫力」と「摩擦力」が掛かり続けてしまう
↓
⑦その結果、「膝のお皿」と「太ももの骨」の間にある「関節包」にも、同じような場所に「圧迫力」と「摩擦力」が掛かり続けてしまい、「関節包」は炎症を引き起こし、痛みが発生してしまう
このような順序を経て、「膝のお皿の裏」は、痛みが発生してしまいます。
痛みの出る場面
膝を曲げ伸ばしをする時や、階段を上り下りする時、椅子から立ち上がる時などに、痛みが出るのが特徴です。
「膝蓋大腿関節症」の対処法とは?
急性期は「膝のお皿周辺」を冷やす
「膝のお皿」や、その周りの部分を触って、熱感・腫れ(急性期=ケガの状態)があったら、「アイスバッグ(氷のう)」などで、まずは冷やしながら安静にします。
「膝のお皿」の動きを滑らかにする
熱感・腫れが収まったら、次は「膝のお皿」の動きを滑らかにするという対処法をします。
「膝蓋大腿関節症」は、「膝のお皿の動きの悪さ」が痛みの原因なので、「膝のお皿」を柔らかくし、動きを滑らかにすることで「膝大腿関節症」は改善します。
やり方は、以下のセルフマッサージが効果的です。
■ セルフマッサージ(膝のお皿を上下左右方向へ動かす)
①膝をピーンと伸ばし切った状態で「膝のお皿」を確認し、両手の親指で「膝のお皿」を挟み込み、左右に動かす(30回ほどやる)(膝のお皿の裏を、弧を描くようにカーブさせながら動かすのがコツです)
②同様に、両手の親指で「膝のお皿」を挟み込み、上下に動かす(30回ほどやる)(膝のお皿の裏を、弧を描くようにカーブさせながら動かすのがコツです)
「大腿直筋」を緩める・伸ばす
次に「大腿直筋(だいたいちょっきん)」を緩める・伸ばすという対処法をします。
「大腿四頭筋」が硬くなると「膝のお皿」の動きが悪くなり、「膝蓋大腿関節症」になると上でも書きましたが、「大腿四頭筋」はその名の通り、「大腿直筋」「内側広筋(ないそくこうきん)」「中間広筋(ちゅうかんこうきん)」「外側広筋(がいそくこうきん)」という4つの大きな筋肉で作られていてます。
その中で、痛みを引き起こす一番の原因になっているのは、「大腿直筋」の硬さです。
なので「大腿直筋」を緩めたり、伸ばしたりして硬さを取り除くことで、「膝蓋大腿関節症」は改善します。
やり方は、以下のセルフマッサージ(横方向・縦方向)と、ストレッチが効果的です。
■ セルフマッサージ(大腿直筋を横方向へ緩める)①軽く膝を曲げ、太ももの前側に力を入れると、ピーンと一番張った筋肉(大腿直筋)に触れられるので確認し、両手の4本の指を真っすぐ伸ばし、「大腿直筋」の両側に4本の指を押し当てる
②股関節に近い部分から膝関節に向かって場所を変えながら、「大腿直筋」の両側に4本の指を押し当てて緩めて行く(ゆっくり10回ほどやる)③骨盤の骨の出っ張り(上前腸骨棘・じょうぜんちょうこつきょく)から指2本分くらい下(下前腸骨棘・かぜんちょうこつきょく)に、「大腿直筋」の始まりがあるので、先ほどと同じように太ももの前側に力を入れると、ピーンと一番張った筋肉(大腿直筋)に触れられるので確認し、外側から4本の指を押し当てる
④太ももの付け根から15センチほど下まで場所を変えながら、「大腿直筋」の外側に4本の指を押し当てて緩めて行く(ゆっくり10回ほどやる)
■ セルフマッサージ(大腿直筋を縦方向へ緩める)①上のマッサージが終わったら、両手の母指球(手のひらの親指の付け根の膨らみ部分)を大腿直筋に押し当てる
②股関節に近い部分から膝関節に向かって場所を変えながら、大腿直筋を両手で包み込むように、母指球を押し当てて緩めて行く(ゆっくり10回ほどやる)
■ ストレッチ①立った状態で壁や椅子につかまり、伸ばしたい方の足首を手でつかみ、「大腿直筋」と「中間広筋」を一緒に伸ばして行く(30秒ほどやる)(この時、つかんだ方の膝が外側に向きやすいので、膝を真っすぐの方向にして、伸ばして行くのがコツです)
根本的に改善したい場合は?
仕事やスポーツなどのやり過ぎなどにより「膝蓋大腿関節」が痛くなった場合は、スポーツなどを控えて、痛みが改善するまで上に書いた「対処療法」を継続して行えば良いと思います。
しかしO脚などの「構造的な膝蓋大腿関節への負担」が、痛みを発生させている原因であれば、上の「対処療法」で痛みが軽減したとしても、同じような生活習慣を繰り返せば、また「膝蓋大腿関節」が痛くなる可能性があります。
なので根本的に痛みを改善したいのであれば、上の「対処療法」と一緒に、「根本療法」をするのがおススメです。
「膝蓋大腿関節」を痛くさせないためには、根本の原因を消滅させましょう。
ではO脚などの構造的な問題を解決するのは、どうしたら良いでしょうか?
答えは「姿勢」にあります。
生まれ持った特徴(先天的)としてO脚だったりすることはありますが、私たちの膝が痛みを発するようにまで、O脚が進行してしまったのは、生活習慣(後天的)であることは間違いありません。
「生活習慣の悪さ」が、「姿勢の悪さ」を引き起こしています。
なので、根本的に膝の痛みを発生させないためには、「姿勢改善」が必要不可欠となります。
この「姿勢改善」については、また別の記事でご紹介したいと思いますので、ぜひそちらの記事もあわせてご覧下さい。
まとめ
いかがだったでしょうか?
膝の前側の痛みの原因の一つ、「膝蓋大腿関節症」の原因と対処法がおわかりになったでしょうか?
勝負に勝つ(痛みの改善)には、まず「敵の情報と攻略法」を知ることです。
これなくしては、勝負に勝つことはできません。
ぜひこの記事を良くお読み頂いて、今後の治療にお役立て下さい。
またこの記事に書ききれなかった、他の原因による「膝の前側の痛み」も、別の記事でご紹介したいと思いますので、ぜひそちらの記事もあわせてご覧下さい。