なぜ私の膝は裏側が痛いの？その原因と対処方法を徹底解説いたします！ ①「ベーカー嚢腫」編

「膝の裏側が痛いんですが、私の場合、ちょっと変な場所が痛いんです」

こんな方いらっしゃいますよね？

そこであなたは以下のように考えているのではないでしょうか？

当院に膝痛でご来院される患者様の訴えで、一番多いのが「膝の内側の痛み」ですが、次に多いのは「膝の前側や、裏側の痛み」です。

でも痛みを発する場所は十人十色で、「太ももの骨の内側」だったり、「太ももの骨とすねの骨の間」だったり、「すねの骨の上の方」だったり、人それぞれです。

なので、それぞれが近い場所にあっても、痛い場所自体が違うので、痛みの原因もそれぞれ違ってきます（膝関節の構造は複雑ですからね）。

しかし、それぞれの原因を一つの記事にまとめると、スゴく長くなってしまうので、今回は「膝の裏側の痛み」の中でも、「太ももの骨の内側」が痛くなる原因と、その対処法についてお話ししたいと思います。

この記事をお読み頂くと、あなたが悩んでいらっしゃる、ちょっと変な場所が痛む「膝の裏側の痛み」のことが良くわかり、きっと今後の治療のお役に立つことでしょう。

 

「太ももの骨の内側」には何があるの？

私たちの膝関節は、骨・筋肉・靭帯・滑膜などで作られていますが、今回のテーマの「膝の裏側の、太ももの骨の内側」には何があるのでしょう？

「膝の裏側の、太ももの骨の内側」には、①「半膜様筋（はんまくようきん）」②「半膜様筋滑液包（はんまくようきんかつえきほう）」③「腓腹筋内側頭（ひふくきんないそくとう）」④「内側腓腹筋滑液包（ないそくひふくきんかつえきほう）」という、「2つの筋肉」と「2つの滑液包」があります。

①「半膜様筋」②「半膜様筋滑液包」の特徴

まず「半膜様筋」ですが、骨盤の後ろから始まり、膝関節をまたいで、「すねの骨の内側」で終わる長い筋肉で、膝を曲げる働きがあります。

そして「半膜様筋滑液包」は、「大腿骨内顆（だいたいこつないか）」という、「膝の裏側にある、太ももの骨の内側の出っ張り」の上にあり、「半膜様筋」と「大腿骨内顆」との「摩擦力」を減らす働きがあります。

なぜこの「半膜様筋滑液包」が必要なのかというと、これは「半膜様筋」以外の筋肉全般に共通して言えることなのですが、筋肉は伸び縮みして、腕や足を曲げ伸ばしするという動きの中で、とても負担が掛かりやすい「弱点」とも言える部分があるからです。

その「弱点」とは、関節の近くにある、骨の「膨らみ」や「出っ張り」部分です。

骨は関節の近くになると、「膨らみ」や「出っ張り」部分を作って、上下の骨の接地面積を広くすることで、関節の安定性を高めています。

しかしその反面、骨の「膨らみ」や「出っ張り」部分は、筋肉との「摩擦力」をとても強くしてしまいます。

例えると、直角部分のある崖で、下から荷物をロープで引き上げると、その直角部分でロープは擦れて傷んでしまいます。

それと同じようなことが、筋肉にも起きてしまいます。

そこで私たちの身体は、摩擦力が強く掛かる、骨の「膨らみ」や「出っ張り」部分に、「滑液包」という潤滑油が入った小袋を作ることで、筋肉との摩擦力を減らしています。

なので「半膜様筋」は膝を曲げる時に、「大腿骨内顆」と「摩擦力」が強くなるので、「半膜様筋滑液包」という潤滑油が入った小袋を作ることで「摩擦力」を減らし、自分が傷つかないようにしています。

③「腓腹筋内側頭」④「内側腓腹筋滑液包」の特徴

次に「腓腹筋」という「ふくらはぎの筋肉」ですが、この筋肉は膝関節に近い上の方で、内側と外側に二股に分かれています。

今回取り上げるのは、内側の方の「腓腹筋」です。

「腓腹筋内側頭」は、太ももの内側から始まり、膝関節をまたいで、足のかかとで終わる長い筋肉で、膝を曲げる働きがあります。

そして「内側腓腹筋滑液包」は、「大腿骨内顆」の上にあり、「腓腹筋内側頭」と「大腿骨内顆」との「摩擦力」を減らす働きがあります。

やはりこの「腓腹筋内側頭」も、上に書いた「半膜様筋」と同じようなことが言え、「大腿骨内顆」の上を通る時に、「摩擦力」が強くなってしまいます。

なのでこの部分にも、「内側腓腹筋滑液包」という、潤滑油が入った小袋を作ることで摩擦力を減らし、筋肉が傷つかないようにしています。

 

「ベーカー嚢腫」の原因とは？

「半膜様筋」と「腓腹筋内側頭」の硬さが痛みを引き起こす

では今回のテーマである、「膝の裏側の、太ももの骨の内側」はなぜ痛くなるのでしょうか？

答えは、「半膜様筋」と「腓腹筋内側頭」が硬くなるからです。

上にも書きましたが、「半膜様筋」と「腓腹筋内側頭」は、膝を曲げる働きのある筋肉です。

「半膜様筋」と「腓腹筋内側頭」が硬くなる原因は様々ありますが、特に多いのは、下の2つのケースです。

前者の「使い過ぎによる硬さ」は、スポーツなどが原因なので、限られた方に当てはまるケースです。

しかし、実際の臨床現場で見られる患者様の多くは、後者の「O脚により膝が曲がってしまった」というケースに当てはまり、それが原因で「半膜様筋」と「腓腹筋内側頭」が硬くなってしまっています。

なのでこの記事は、O脚により膝が曲がってしまい、「半膜様筋」と「腓腹筋内側頭」が硬くなってしまった、というケースで話しを進めて行きたいと思います。

ではなぜ、O脚により膝が曲がってしまい、「半膜様筋」と「腓腹筋内側頭」が硬くなってしまうと、「膝の裏側の、太ももの骨の内側」に痛みが発生するのでしょうか？

その痛みの発生順序は、以下のようになっています。

このような順序を経て、「膝の裏側の、太ももの骨の内側」は、痛みが発生してしまいます。

また話しは長くなりましたが、この「腫れ」のことを「ベーカー嚢腫」と言います（ベーカーさんという外国人が論文で発表したので、この名前になっているだけで、他に意味はありません）。

「反張膝」でも起こる

「ベーカー嚢腫」は、「膝の裏側の、太ももの骨の内側」が腫れて、痛みが発生してしまうのが特徴です。

上に書いた話しだと、「膝が曲がっている」と痛みが発生してしまうと書きましたが、実は逆に、「膝が伸び切って、反っている」状態でも痛みが発生してしまいます。

その「膝が伸び切って、反っている」状態のことを、「反張膝（はんちょうひざ）」と言います。

構造的に「反張膝」である方は非常に多く、痛みが発生していないのであれば、特に「反張膝」自体は悪いものではありません。

しかし、「膝の裏側」が痛いのであれば、「反張膝」が原因である可能性もあります。

ではこの「反張膝」の何が悪いのかというと、膝関節が反り過ぎてしまっているために、「大腿骨内顆（太ももの骨の裏の出っ張り）」が、更に後ろに出っ張ってしまい、上に書いたように、「半膜様筋」と「腓腹筋内側頭」との摩擦力が、強くなってしまうところです。

やはりこの状態が続くと、「半膜様筋滑液包」と「内側腓腹筋滑液包」に炎症を引き起こし、その結果「腫れ」てしまい、「ベーカー嚢腫」になって、痛みを発生してしまいます。

痛みの出る場面

膝を曲げる時や、しゃがむ時などに、痛みが出るのが特徴です。

やはり膝の裏側が「腫れ」ているので、膝を曲げたり、しゃがんだりする時に、その「腫れ」が挟まってしまい、刺激が増大するので、この動きの時に痛みが出てしまいます。

 

「ベーカー嚢腫」の対処法とは？

急性痛があったら冷やす

「膝の裏側」部分を触って、熱感・強い腫れ（急性痛）があったら、「アイスバッグ（氷のう）」などで、まずは冷やしながら安静にします。

「半膜様筋」「腓腹筋内側頭」を緩める・伸ばす

急性痛が収まったら、次は筋肉の硬さを緩め、伸ばします。

今回のテーマの「膝の裏側の、太ももの骨の内側」の痛みの原因は、「半膜様筋」と「腓腹筋内側頭」の硬さによる、「半膜様筋滑液包」と「内側腓腹筋滑液包」の「炎症 ＝ 腫れ」です。

なので、「半膜様筋」と「腓腹筋内側頭」の硬さを取り除くことで、痛みは改善します。

やり方は、以下のセルフマッサージ（縦方向）と、ストレッチが効果的です。

根本的に改善したい場合は？

仕事やスポーツなどのやり過ぎなどにより「ベーカー嚢腫」になった場合は、スポーツなどを控えて、痛みが改善するまで上に書いた「対処療法」を継続して行えば良いと思います。

しかしO脚やX脚などの、「構造的な半膜様筋と腓腹筋内側頭への負担」が、痛みを発生させている原因であれば、上の「対処療法」で痛みが軽減したとしても、同じような生活習慣を繰り返せば、また「ベーカー嚢腫」になる可能性があります。

なので根本的に痛みを改善したいのであれば、上の「対処療法」と一緒に、「根本療法」をするのがおススメです。

「ベーカー嚢腫」にならないためには、根本の原因を消滅させましょう。

ではO脚やX脚などの、構造的な問題を解決するのは、どうしたら良いでしょうか？

答えは「姿勢」にあります。

生まれ持った特徴（先天的）としてO脚だったり、X脚だったりすることはありますが、私たちの膝が痛みを発するようにまで、O脚やX脚が進行してしまったのは、生活習慣（後天的）であることは間違いありません。

「生活習慣の悪さ」が、「姿勢の悪さ」を引き起こしています。

なので、根本的に膝の痛みを発生させないためには、「姿勢改善」が必要不可欠となります。

この「姿勢改善」については、また別の記事でご紹介したいと思いますので、ぜひそちらの記事もあわせてご覧下さい。

 

まとめ

いかがだったでしょうか？

膝の裏側の痛みの原因の一つ、「ベーカー嚢腫」の原因と対処法がおわかりになったでしょうか？

勝負に勝つ（痛みの改善）には、まず「敵の情報と攻略法」を知ることです。

これなくしては、勝負に勝つことはできません。

ぜひこの記事を良くお読み頂いて、今後の治療にお役立て下さい。

またこの記事に書ききれなかった、他の原因による「膝の裏側の痛み」も、別の記事でご紹介したいと思いますので、ぜひそちらの記事もあわせてご覧下さい。