なぜ私の膝は前側が痛いの?その原因と対処法を徹底解説いたします!②「膝蓋上嚢炎」編
「膝の前側が痛いんですが、私の場合、ちょっと変な場所が痛いんです」
こんな方いらっしゃいますよね?
そこであなたは以下のように考えているのではないでしょうか?
- 何でこんな場所が痛くなるのだろう?
- 病院で「軟骨がすり減っていて、骨と骨の間が狭くなっているのが痛みの原因です」と言われたけれど、本当にそれが自分の膝の痛みの原因なのだろうか?
- 軟骨というよりは、筋肉のあたりが痛いような感じがする
- シップ・痛み止め薬・電気・マッサージ・リハビリだけで本当に治るのだろうか?
当院に膝痛でご来院される患者様の訴えで、一番多いのが「膝の内側の痛み」ですが、次に多いのは「膝の前側や、裏側の痛み」です。
でも痛みを発する場所は十人十色で、「膝の前側」と言っても、「膝のお皿の上」だったり、「膝のお皿の裏」だったり、「膝のお皿の下」だったり、もっと下の方の「すねの骨の出っ張り」だったり、人それぞれです。
なので、それぞれが近い場所にあっても、痛い場所自体が違うので、痛みの原因もそれぞれ違ってきます(膝関節の構造は複雑ですからね)。
しかし、それぞれの原因を一つの記事にまとめると、スゴく長くなってしまうので、今回は「膝の前側の痛み」の中でも、「膝のお皿の上」が痛くなる原因と、その対処法についてお話ししたいと思います。
この記事をお読み頂くと、あなたが悩んでいらっしゃる、ちょっと変な場所が痛む「膝の前側の痛み」のことが良くわかり、きっと今後の治療のお役に立つことでしょう。
「膝のお皿の上」には何があるの?
私たちの膝関節は、骨・筋肉・靭帯・滑膜などで作られていますが、今回のテーマの「膝のお皿の上」には何があるのでしょう?
そこには膝関節の曲げ伸ばしに重要な働きをする、「膝蓋上嚢(しつがいじょうのう)」という「ポケット状の袋」と、「膝蓋骨上滑液包(しつがいこつじょうかつえきほう)」という「平べったい袋」があります。
「膝蓋上嚢」と「膝蓋骨上滑液包」の特徴
膝関節は、「関節包(かんせつほう)」という袋のような膜で、前後左右を360度グルっと覆われています。
そしてこの「関節包」は、膝のお皿から8㎝ほど上の方までを覆っていて、その部分は「ポケット状の袋」のような形をしており、「膝蓋上嚢」と呼ばれています。
「膝蓋上嚢」はこの「関節包」の一部分で、内部は「関節液=膝のお水」という「潤滑剤」で満たされていて、膝を曲げ伸ばしする時に移動する「膝蓋骨(しつがいこつ・膝のお皿)」「中間広筋(ちゅうかんこうきん・太ももの筋肉)」と、「大腿骨(だいたいこつ・太ももの骨)」との「摩擦」を少なくする働きをしています。
また「膝蓋上嚢」は、自分の前側に「膝蓋骨上滑液包」という「潤滑剤」を多く含んだ「平べったい袋」をもう一つ加えて、更に「膝蓋骨」「中間広筋」と、「大腿骨」との「摩擦」を少なくさせています。
「膝蓋上嚢炎」の原因とは?
「大腿直筋」と「中間広筋」が硬いと、痛い
「膝蓋上嚢」は、日常生活の中で普通に使われている分には、痛くなることはありません。
なぜなら「膝蓋上嚢」は上にも書いたように、本来は「潤滑剤」によって守られていて、周辺組織から許容範囲を超えてしまうような、強い「摩擦」刺激を受けていないからです。
なので「膝蓋上嚢」が痛くなるのは、周辺組織から許容範囲を超えてしまうような、強い「摩擦」刺激を受けてしまっている時です。
では「膝蓋上嚢」に、強い「摩擦」刺激を与えてしまう原因とは一体何なのでしょうか?
答えは、「大腿直筋」と「中間広筋」の硬さです。
「大腿直筋」と「中間広筋」が硬くなると、結果として「膝蓋上嚢」に痛みを発生させてしまいます。
その痛みの発生順序は、
①仕事・生活習慣・スポーツなどのやり過ぎや、O脚などの構造上の問題が、「大腿直筋」に負担を掛け続けてしまうと、硬くなる
↓
②同じ理由で、その裏側にある「中間広筋」も一緒に硬くなってしまう
↓
③「大腿直筋」と「中間広筋」の硬さにより、「膝蓋骨上滑液包」との「摩擦」が増大する
↓
④「膝蓋骨上滑液包」からの「摩擦」刺激の増大により、その裏側にある「膝蓋上嚢」が炎症を引き起こしてしまい、痛みが発生する
です。
「膝のお皿の上が腫れていて、痛いんです」
また、このような方もいらっしゃるように、「膝蓋上嚢」が炎症を起こすと、内部にある「関節液=膝のお水」が増えて、腫れてしまい、「膝蓋上嚢」内部の圧力が上昇して、痛くなってしまう場合もあります。
痛みの出る場面
膝を曲げ伸ばしをする時、階段を上り下りする時などに、痛みが出るのが特徴です。
「膝蓋上嚢炎」の対処法とは?
急性期は「膝蓋上嚢」を冷やす
「膝のお皿の上」の部分を触って、熱感・腫れ(急性期=ケガの状態)があったら「アイスバッグ(氷のう)」などで、まずは冷やしながら安静にします。
「大腿直筋」を緩める・伸ばす
熱感・腫れが収まったら、次は「大腿直筋」を緩める・伸ばすという対処法をします。
本来であれば、「中間広筋」も直接触って緩めたいのですが、「大腿直筋」の裏側にあって触ることができません。
なので「大腿直筋」に圧迫力を与え、間接的に「中間広筋」も緩めて硬さを取り除くことで、「膝蓋上嚢」の痛みは改善します。
やり方は、以下のセルフマッサージ(横方向・縦方向)と、ストレッチが効果的です。
■ セルフマッサージ(大腿直筋を横方向へ緩める)①軽く膝を曲げ、太ももの前側に力を入れると、ピーンと一番張った筋肉(大腿直筋)に触れられるので確認し、両手の4本の指を真っすぐ伸ばし、「大腿直筋」の両側に4本の指を押し当てる
②股関節に近い部分から膝関節に向かって場所を変えながら、「大腿直筋」の両側に4本の指を押し当てて緩めて行く(ゆっくり10回ほどやる)③骨盤の骨の出っ張り(上前腸骨棘・じょうぜんちょうこつきょく)から指2本分くらい下(下前腸骨棘・かぜんちょうこつきょく)に、「大腿直筋」の始まりがあるので、先ほどと同じように太ももの前側に力を入れると、ピーンと一番張った筋肉(大腿直筋)に触れられるので確認し、外側から4本の指を押し当てる
④太ももの付け根から15センチほど下まで場所を変えながら、「大腿直筋」の外側に4本の指を押し当てて緩めて行く(ゆっくり10回ほどやる)
■ セルフマッサージ(大腿直筋を縦方向へ緩める)①上のマッサージが終わったら、両手の母指球(手のひらの親指の付け根の膨らみ部分)を大腿直筋に押し当てる
②股関節に近い部分から膝関節に向かって場所を変えながら、大腿直筋を両手で包み込むように、母指球を押し当てて緩めて行く(ゆっくり10回ほどやる)
■ ストレッチ①立った状態で壁や椅子につかまり、伸ばしたい方の足首を手でつかみ、「大腿直筋」と「中間広筋」を一緒に伸ばして行く(30秒ほどやる)(この時、つかんだ方の膝が外側に向きやすいので、膝を真っすぐの方向にして、伸ばして行くのがコツです)
根本的に改善したい場合は?
仕事やスポーツなどのやり過ぎなどにより「膝蓋上嚢」が痛くなった場合は、スポーツなどを控えて、痛みが改善するまで上に書いた「対処療法」を継続して行えば良いと思います。
しかしO脚などの「構造的な膝蓋上嚢への負担」が、痛みを発生させている原因であれば、上の「対処療法」で痛みが軽減したとしても、同じような生活習慣を繰り返せば、また「膝蓋上嚢」が痛くなる可能性があります。
なので根本的に痛みを改善したいのであれば、上の「対処療法」と一緒に、「根本療法」をするのがおススメです。
「膝蓋上嚢」を痛くさせないためには、根本の原因を消滅させましょう。
ではO脚などの構造的な問題を解決するのは、どうしたら良いでしょうか?
答えは「姿勢」にあります。
生まれ持った特徴(先天的)としてO脚だったりすることはありますが、私たちの膝が痛みを発するようにまで、O脚が進行してしまったのは、生活習慣(後天的)であることは間違いありません。
「生活習慣の悪さ」が、「姿勢の悪さ」を引き起こしています。
なので、根本的に膝の痛みを発生させないためには、「姿勢改善」が必要不可欠となります。
この「姿勢改善」については、また別の記事でご紹介したいと思いますので、ぜひそちらの記事もあわせてご覧下さい。
まとめ
いかがだったでしょうか?
膝の前側の痛みの原因の一つ、「膝蓋上嚢炎」の原因と対処法がおわかりになったでしょうか?
勝負に勝つ(痛みの改善)には、まず「敵の情報と攻略法」を知ることです。
これなくしては、勝負に勝つことはできません。
ぜひこの記事を良くお読み頂いて、今後の治療にお役立て下さい。
またこの記事に書ききれなかった、他の原因による「膝の前側の痛み」も、別の記事でご紹介したいと思いますので、ぜひそちらの記事もあわせてご覧下さい。